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名古屋市昭和区八事にある矯正専門の歯科医院
(鶴舞線・名城線 八事駅6番出口すぐ) 日曜も診療

ふじき矯正歯科で発行している院内誌です 一部を紹介します!



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Vol.55 (H26年4月) 
 当院で矯正治療を受けている方の中には,歯が骨の中に埋まったまま生えてこないため,骨の中から歯を引っぱりだす治療を受けている方がおられます。矯正治療では,多くの場合,すでに生えている歯を動かしますが,実は骨の中に埋まっている歯を動かして,骨の中から歯を引っぱり出してくることもできるのです。
 ただ,ひとつの条件として,歯の周りの「歯根膜(しこんまく)」という部分が健常であることが挙げられます。歯根膜の中に,骨を吸収する細胞や骨を作る細胞が含まれているため,通常,歯に力が加わると,歯の一方の面では骨が吸収され,もう一方の面では骨が作られて,歯は骨の中を動くことができるのです。歯が骨の中に埋まったまま生えてこない原因のひとつに,歯根膜に問題が生じている場合があります。歯根膜に問題が生じると,歯は骨の中を動けないので,歯が生えてくることもできないのです。当然ですが,このように歯根膜に問題があって歯が生えてこない場合は,矯正治療で歯を引っぱりだすこともできません。
 近年よく聞く「インプラント(人工歯根)」には,歯根膜はありません。骨にインプラントを植立したら,その部位からインプラントは動かないのです。天然の歯の場合,歯根膜があるおかげで,成長や老化に合わせて歯が自然に少しずつ動き,年齢による筋力の変化などに適応していけるのですが,インプラントの場合は動かないため,定期的に歯科医院で調節をしてもらう必要があります。健全な歯根膜が存在して歯が動くということは,実はとても大切なことなのです。天然の歯に勝る人工物はないということですね。






Vol.56 (H26年6月) 
 冷たいものがおいしい季節になってきました。アイスクリームを食べて,頭が痛くなったこと,ありませんか?多くの人が,一度は経験したことがあると思います。氷を手で持ったら,手が冷たく痛く感じるだけで他のところは痛くならないのに,アイスクリームを口の中に入れたら,口の中が冷たく感じるとともに頭も痛くなる,考えてみたら,なんだか不思議ですね。
 このように痛みの部位と原因部位が違うという現象は,一般的によくあることで,関連痛などと言われています。上記のアイスクリームの例では,口の中の感覚情報が脳へ伝わる途中で,一部,神経の重なり合っている部位があるために,脳がまちがえて認知してしまい,口の中への冷たい刺激なのに,頭が痛いなど,違う部位の症状となって表れてしまうのです。
 この関連痛,歯科ではとても多く見られます。他の部位に問題があるのに,歯が痛くなるという現象です。関連痛で歯が痛くなるのは,神経血管系や心臓,心因性に由来するものが多いと言われていますが,歯科医師がその原因を突き止めるのは,なかなか困難です。「むし歯ではないのに歯が痛い」となったら,内科などで見てもらった方がよいのかもしれません。
 実は私自身,まだ歯科の知識が全くない高校生のとき,原因不明の歯痛で,歯の神経をとってもらったことがあります。「むし歯はなく,原因はわからない。歯の神経をとったら痛みはなくなるかも」と,その時に診てもらった歯科医に言われ,安易に神経をとってもらってしまいました。最近,ちょっとだけその歯で悩まされていますので,当時,もう少しがまんをして様子を見るようにすればよかったかな,と少々後悔しています。





Vol.57 (H26年8月) 
 むし歯治療で,歯につめてもらったりかぶせてもらったりした後,噛んだ感じがなんとなくしっくりこなかったことってありませんか?大きなむし歯治療を受けたことがない場合はよくわからないと思いますが,このような治療を受けたことがある方にとっては,大きくうなずける話だと思います。
 噛んだ感じは,歯の周りにある歯根膜や,噛むために働いている筋肉,口を動かしている関節,舌,口の中の粘膜など,いろいろな部位からの感覚情報が脳でまとめられて感じています。これらの感覚はとても繊細なので,髪の毛1本噛むだけでも認識できます。むし歯治療では,天然の歯とは異なる人工物(金属やプラスチックなど)を歯につめたりかぶせたりしますので,歯とは違う材質のもので噛むことにより,治療前とは噛んだ感じが違ってきます。また,つめたものやかぶせたものは,元の歯と全く同じ形ではありませんので,微妙にかみ合わせが変化し,治療前とは噛んだ感じが変わることもあります。さらに,噛む動きは単純に口が上下に動いているのではなく,左右や前後にも動きますので,かみ合わせた時に違和感がなくても,実際に食べ物を噛むと,しっくりこないという場合もあります。
 噛むときの感覚はこんなに繊細なのに,矯正治療中に,かみ合わせがしっくりこない,と感じる人はとても少ないです。矯正治療中は,かみ合わせが大きく変化していくのに,なんだか不思議ですね。矯正治療中は,歯を積極的に移動させることで歯根膜が鈍感になること,それに合わせて,かむ動きも無意識のうちに微調整されるため,違和感を感じる人は少ないといわれています。人間の体はよくできていて,その時の状況に適応できるのです。矯正治療が終了すると,歯根膜の感覚は少しずつまた元に戻りますので,御心配なく。。。
 






Vol.58 (H26年10月) 
 舌は,とても重要な器官です。矯正治療を行う時には,舌で歯を押してしまうなど,やっかいもの扱いされることもありますが,咀嚼する時には舌がないと食べ物を歯の上へ運んだりすりつぶしたりすることができませんし,飲み込む時には舌がないと食道の方へ食べ物を送るのが難しくなります。また,舌がないと味を感じにくくなったり,話すのにも支障がでます。普段はあまり意識しませんが,舌はとても重要な役割を果たしているのです。
 舌の中には,縦,横,前後に筋肉が張り巡らされており,いろいろな形に変形することができます。また,舌は外側にもたくさんの筋肉がつながっていて,いろいろな方向へ動くことができます。形もいろいろ,動きもいろいろ,本当に複雑な動きができる器官なのです。ただ,すべての筋肉を完全に使いこなして,本当に舌を自在に操っている人は,ごくわずかだと思われます。多くの場合,成長の過程や毎日の習慣などで,その動かし方にパターンができてきて,舌にあるたくさんの筋肉の中で,よく使われる筋肉,あまり使われない筋肉などができていくのだろうと思われます。そして,その状態によっては,上手に食べられない,歯並びに影響をあたえるなど,特異的な舌の動きもできてしまうのだと思われます。
 そこで当院では,舌の筋肉をきちんと使えるように,お口のトレーニングをしています。舌の動きを支配している神経回路の問題や,これまで使っていなかった筋肉を使う大変さなど,新しい舌の動きを身につけるのは簡単ではありませんが,できないことではありません。アナウンサーも,練習して滑舌よく話せるようになっていますしね。舌の筋肉をきちんと使えるように,一緒にがんばりましょう。
 






Vol.59 (H26年12月) 
 舌の感覚って,とても複雑です。例えば,舌の上に砂糖水を1滴たらしたとします。すると,舌で甘味を感じるとともに,舌に水滴が触れた,ことを認識します。「味覚」と「触れた感覚」は違う神経で認識しますので(参考:味覚は鼓索神経,触れた感覚は舌神経),場合によっては,甘味だけを感じて,水滴の触れた感覚はわからないことがあります。例えば,親知らずを抜くために麻酔をすると,歯だけでなく舌もしびれて感覚がなくなることがありますが,こんなときでも味は感じます。
 親知らずを抜くとき,麻酔で舌も感覚がないはずなのに,舌に器具が触れているのがわかることがあります。これは,舌に器具が押しつけられて,舌が少し変形しているときに起こります。「舌に触れた感覚」と「舌が変形している感覚」は違う神経で認識しますので(参考:触れた感覚は舌神経,変形の感覚は舌下神経),舌に触れた感覚はなくても,舌に押しつけられている,という感覚はわかるのです。
 したがって,アメをなめる時は,舌にアメが触れている感覚,舌にアメが押しつけられている感覚,そしてアメの味,それぞれが違う神経を通して脳へ伝えられ,それが脳で統合されて,アメを味わっているということになります。実際には,歯や頬,歯肉などからも感覚が伝わりますので,もっと複雑な感覚が脳で統合されて,アメの味を認識しています。
 実は,上記の話は舌の前2 / 3についてのことで,舌の後ろ1 / 3については,さらに違う神経で感覚を認識しています。また,舌を動かす運動神経も,異なる神経です。舌の神経って,本当に複雑なのです。




Vol.60 (H27年2月) 
  上下の唇をくっつけたまま,上下のおく歯を噛み合わせたり,離したりしてみて下さい。では次に,上下の唇をくっつけたまま,ガムなどを噛んでみて下さい。どうでしょう。この両者の動き,同じですか?違いますか?おそらく,多くの人が「違う」と答えると思います。
 ガムを噛む時には,上下のおく歯が噛み合ったり離れたりしているだけでなく,舌や唇,頬など,たくさんの部位が協調して動いています。舌や唇、頬などもガムを運んだり潰したりするために一緒に動いているのです。したがって,上記の上下のおく歯を噛み合わせたり離したりするだけの動きと,ガムを噛む動きは違ってきます。
 また,おもしろいことに,上下のおく歯を噛み合わせたり離したりする動きは,意識的にする必要があると思いますが,ガムを噛む動きは,ほとんど無意識のうちに上下の歯が噛み合ったり離れたりしていると思います。これは,脳幹にあるリズムジェネレーターというところで噛む動きのリズムが作られているためです。したがって,上下のおく歯を噛み合わせたり離したりなどと意識しなくてもガムを噛むことができるのです。
 この上下のおく歯を噛み合わせたり離したりというリズムを作るリズムジェネレーターと,舌や唇,頬を動かすリズムジェネレーターが同一なため,ガムを噛む時の複雑な動きができるのだと思われますが,現在のところ,この点は明らかにされておらず,今後の研究課題とされています。毎日何気なく行っている噛むという動きですが,実は,とても複雑な動きをしているのです。





ふじき矯正歯科

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